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【世界日報】米国の対中国政策―ジェームズ・リリー元米駐中国大使に聞く2005年12月22日

【世界日報】米国の対中国政策―ジェームズ・リリー元米駐中国大使に聞く

2005年12月22日



 ジェームズ・リリー 米中央情報局(CIA)情報分析官、国務省次官補代理(東アジア担当)、ジョンズ・ホプキンス大教授などを経て、駐韓大使(86~89年)、駐中国大使(89~91年)、国防次官補(91~93年)を歴任。現在、保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)上級研究員。


経済は協議推進、軍事は警戒

「平和的発展」は明白な矛盾
 ブッシュ米政権は国際社会で影響力の拡大を続ける中国とどのように向き合っていこうとしているのか。米国の対中国政策は、日本の外交・安保政策を左右する重要なテーマだ。東アジア情勢に詳しいジェームズ・リリー元米駐中国・駐韓大使(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所=AEI=上級研究員)に聞いた。

(聞き手=ワシントン・早川俊行)

 ――ブッシュ政権は現在、どのような対中政策を取っているのか。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は先月、封じ込め政策の「コンテインメイト」と、関与政策の「エンゲージメント」を合わせた「コンゲージメント」戦略だと表現したが。

 米中関係は非常に複雑で、一つの言葉に要約することはできない。その言葉は誤解を招く恐れがあり、危険だ。安全保障、対テロ、北朝鮮、台湾海峡、東南アジア、石油などあらゆるレベルの関係を見なければならない。

 米中関係はいつもそうだが、ポジティブな側面とネガティブな側面が混ざり合っている。今は為替操作や貿易赤字、市場参入、知的財産権など主要な経済問題に関して中国側と継続的に協議を行っている。その基本的作業をしているのが、ゼーリック国務副長官と戴秉国中国外務次官だ。米中関係はポジティブな側面が進展していると言った方が正確だろう。

 ――中国は十―二十年後にさらに影響力を拡大させることが予想されるが、米政府の長期的な対中戦略は。

 中国が十―二十年後に世界の大国になるという想定だが、中国がそうならない可能性も同じくらいある。われわれはその両方の事態に備えなければならない。

 中国は汚職や農民暴動など国内に大きな問題を抱えている。中国指導部にとっては非常に難しい状況だ。国内問題への対応に多くの時間を割かなければならず、そのために米国とも理解を深めることが重要になっている。

 米国の中国に対する立場は第一に、経済面で公平な競争環境を整えることによって、課題を前進させること。第二は中国軍の近代化を監視することだ。中国は米国と日本を照準にして軍事力の増強、近代化を進めており、これに備えることが必要だ。

 ――中国は自らのパワー拡大を「平和的発展」と呼びながら、一方で急速な軍備増強を続けている。

 軍近代化と「平和的発展」は明らかに矛盾している。彼らは軍近代化をゆっくり進めている、脅威にはならない、防衛的措置だと主張する。だが、潜水艦や航空機、巡航ミサイルなどを購入しているのを見れば、攻撃的な姿勢であることは事実だ。中国が発表する国防費も正確ではない。軍事力の増強を隠しておくことが、彼らの戦略の一つだ。

 ――中国は海軍力の増強に力を入れているが、将来、米海軍と海上自衛隊の脅威になるか。

 「脅威」という言葉は誤りだ。私の感覚では「挑戦」の方がふさわしい。中国が日本と米国に狙いを定めてシステムを発展させていることは疑いの余地がない。

 中国が優先順位を置いているのは海軍、戦略ミサイル部隊、防空の三つだ。おそらく西太平洋や南シナ海、インド洋への戦力投入能力を備えることを目指しているのだろう。中国はエネルギーのためにシーレーンを守らなければならないからだ。

 米国と日本のパワーの前では実際にはそれができないことは中国も分かっている。しかし、米国のプレゼンスが低下し、日本が衰退する可能性があるという前提で事を進めている。


 ――中国は小泉純一郎首相の靖国神社参拝に反発しているが、日中間の歴史問題をどう見ているか。

 中国は日本を第二次世界大戦前の振る舞いだけで見ている。日本が一九四五年から約六十年間、近隣諸国に脅威を与えることなく、民主的に発展し、経済的にも成功を収めたことは考えていない。中国は日本のそうした側面に焦点を置くべきであり、一九四五年以前のことばかりに時間を費やすのはやめるべきだ。

 中国は靖国問題を、国民を動員したり、憤りを表明したり、韓国と共同戦線を張る上で好都合と考えている。つまり、靖国問題は彼らの戦術的な目的にかなっているのだ。

 その一方で、日本と中国の比較優位と相互依存に基づいた経済関係は強力だ。文化面でも日中は結び付いている。四五年以降の日中を見ると、関係が進展した時期もある。七二年に国交が正常化した時がそうだ。だが、さまざまな理由でその時の関係は進展していないようだ。

 ――北朝鮮の核開発問題に関して、中国は北朝鮮に十分な圧力を掛けていないように見える。

 日本人や米国人の目ではなく、中国人の目で北朝鮮問題を見ると、中国が異なった立場からとらえていることが分かる。結論を言えば、中国は北朝鮮の現体制が存続することを望んでいる。

 どんなに不愉快であっても、中国は食糧やエネルギーを北朝鮮に支援し、生き延びさせている。それはなぜか。第一に、北朝鮮が崩壊すれば、四百万人の難民が中国東北部に流れ込み、中国を不安定化させる恐れがあるからだ。

 第二に、核兵器や生物・化学兵器、長距離ミサイルが北朝鮮軍の将軍たちの手に渡ることになる。金正日体制は少なくともコントロールを保っている。体制が崩壊すれば、これらの兵器を手に入れた軍部が、脅迫のために利用するかもしれない。これは中国が望まない事態だ。

 第三に、中国は米軍が駐留する統一コリアを望んでいない。一九五〇年に韓国動乱に参戦したのもそのためだ。中国は韓国内での影響力を高めようとしている。韓国に対する影響力が米国と同じレベルになるか、あるいは上回るまで、中国は北朝鮮問題で大きな譲歩はしないだろう。

 従って、中国は北朝鮮の大量破壊兵器保有に反対だと明言しながらも、最優先事項には位置付けていない。

 ――先月、北京で行われた米中首脳会談に対する評価は。

 首脳会談は米中関係を維持する上で非常に重要なものだ。それは一九七一年にキッシンジャーが周恩来と会談して以来、ニクソン政権からブッシュ政権に至るまでずっとそうだ。勝ったか負けたか、良かったか悪かったかは問題ではない。ハイレベルで関係を維持することが絶対に不可欠なプロセスなのだ。北京での会談もその一部といえる。(聞き手=ワシントン・早川俊行)



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