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民主台湾の「顔」米国行脚 李登輝氏、中国一党独裁と対比 2005年10月23日 産経新聞

民主台湾の「顔」米国行脚 李登輝氏、中国一党独裁と対比


2005年10月23日 産経新聞

 【ワシントン=古森義久】台湾の李登輝前総統は二十三日に約二週間の米国訪問を終えるが、今回の訪米では首都ワシントンを含めた各主要都市での演説などで台湾の民主主義と中国の一党独裁を対比させて、台湾の自立を説くという訴えを繰り返し、台湾の「顔」としての存在感を強く印象づけた。

 李氏は二十二日、米国の最後の訪問地ロサンゼルスでの台米関係団体主催の昼食会で演説し、中国を奴隷国家と評し、「国家が労働者を奴隷扱いし、低賃金の労働をさせることで外国資本を引きつけている」と述べた。李氏は台湾の民主主義を強調する一方、「中国は国内で人権を抑圧し、周辺に対して脅威となっている点で冷戦時代のソ連と変わらない」と非難した。

 八十二歳の李前総統は曾文恵夫人とともに米国アラスカ州のフランク・マカウスキー知事の招待で、二〇〇一年以来四年ぶりに訪米した。十一日にアラスカに着いたあと、十四日からはニューヨークを訪れ、さらに米国の独立宣言の地のフィラデルフィアを経由して、十七日に首都ワシントンに入った。李氏はあくまで私人としての訪米で、首都を訪れるのは八八年の総統就任以来、初めてとなった。

 米国政府は私人である李氏とは接触しなかったが、米国議会では十九日、台湾議員連盟を中心に李氏の歓迎式典を開き、上下両院議員計二十五人が出席した。李氏は同式典の演説でも台湾の民主主義の定着を強調するとともに、「中国の軍国主義や膨張主義の危険」を訴え、米国が台湾への支援を揺るがさないことへの期待を述べた。議員側を代表する形でデーナ・ローラバッカー下院議員(共和党)は「李前総統は中国からトラブルメーカーと呼ばれるが、ジョージ・ワシントンもイギリス植民地軍からすればトラブルメーカーだった」という支援を送った。

 李氏は十九日夜は台湾系米人の集まりで演説し、「台湾人の自己認識の高まり」や「新しい台湾人の時代」を民主主義とからめて力説。台湾の呼称を現在の「中華民国」から将来は「台湾共和国」とする必要を説いた。

 李氏はまたワシントン・ポスト紙のインタビューに応じ、中国が台湾を射程に収めた中・短距離の弾道ミサイルを台湾海峡に近い福建省などに七百基以上も配備したことに関連して、台湾も将来は中国本土を直接に攻撃できる長距離弾道ミサイルの配備も必要になると述べた。

 この発言は米国が台湾に防衛用兵器の売却を許しているのに台湾側が野党の反対で同兵器購入の予算百億ドル分を立法院で否決されてしまったことを受けて、中国の攻撃を抑止するために台湾側も攻撃用ミサイルを保持すべきだという点に力を注いだ。

 米国政府は「一つの中国」の原則を認め、「台湾独立は支持しない」という姿勢を保っているが、李氏は首都のナショナルプレス・クラブの演説で「台湾は完全な民主主義国家になる目標に向かい、着実な道を進む」とか「台湾の事実上の独立と主権はもう明白だから、私は台湾独立を宣言したりはしない」などと述べて、米側との摩擦を避けながらも、台湾自立の方向は明示した。

 李氏の米国各地でのこうした言動は地味ながらも確実に米国民に伝えられ、台湾の民主主義の「顔」としてのイメージを広めたといえる。クリントン、ブッシュ両政権で中国専門の国家情報官だったボブ・サター・ジョージタウン大学教授は「李氏の訪米は米国政府の対中政策にどれほどインパクトを持つかは別として、中国政府も今回はもうほとんど抗議をせず、普通のことになったといえる」と論評した。
(産経新聞)





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